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2008-10-15 Wed 03:28
稀代の悪書と名高い『反戦軍事学』を世に送り出した朝日新書から出版された軍事関係書籍・・・ しかも、タイトルセンスがえもいわれぬ香ばしさを発している。書店の平積みを目にしたときは、怖いもの見たさというか一種の下手物食いの様な感覚で購入した。 が、予想に反してシックにまとまった入門用「戦争論」とも言える仕上がりだった。 ・・・本当、著者の櫻井先生にはお詫びを申し上げたい。 本書は、戦後日本の安全保障論議における知的荒廃を是正しようとするスタンスを基本としている。「進歩・左翼」知識層は実際には軍事力によって担保されている国際社会の現実を直視してこなかったし、「保守・右翼」知識層も再軍備を説いてきたが、整備された軍事力をいかに活かすかという議論を怠ってきた。その上、論客たちは互いに左右論壇で相手に届かない言論を発し続けている。こういう状況にうんざりしている国民・有権者も多いのだろう。自然、他国民に比して日本人は安全保障に鈍感・無知な国民になっている感がある。 まず、本書では『漢書』「魏相丙吉傳」を引用して戦争を5つに類型化している。 「戦争=悪」 の単純な思いこみが未だに支持される日本社会で「戦争論」を説くにはここからというかとか。 即ち、 王兵=無秩序を打破し秩序をもたらす軍事行動 ・・・PKOなど 應兵=他国の侵略行為に応戦する軍事行動 ・・・自衛隊の理想 忿兵=感情に任せた軍事行動 ・・・かつての「暴支膺懲」→日中戦争など 貪兵=他国の領土や財貨を強奪するための軍事行動 ・・・かつての帝国主義政策など 驕兵=自国の威勢を誇示するための軍事活動 ・・・軍事パレードなど 歴史上の戦争や軍事行動がこれらのいずれに類型されるのか、いろいろと解説することで「戦争=悪」という思いこみを解きほぐそうとしている。もっとも、筆者も主張するように実際に同時代を生きる者が冷静に判断を下すことは一筋縄ではいかないのだが。 少し脇道に逸れるが、5つの戦争について解説する各章でも筆者の「現実主義」の徹底ぶりが光っている。今では毀誉褒貶の著しい小泉元首相の外交政策についても、「対米追従」「米一国主義」といった批判を退け、現実に対応せざるを得ない政治特有の「あさましさ」を認めつつも、その合理性を論証している。高坂正堯の「アメリカとは仲良く、中国とは喧嘩せず」を引用し、戦略物資の欠如・低い食糧自給率・防衛の困難な長い海岸線をもつ島嶼国家であるといった日本の「脆弱性」を指摘した上で、たとえ再軍備を果たして「普通の国」になったとしても、かつての大英帝国のように自国の都合で同盟相手を組み換える(あるいは同盟国を必要としない)様な強烈な権勢を持ち得ない点をこれまた冷静に指摘している。 その上で、「ハト派」と「タカ派」に分かれて、「ハト派」vs「タカ派」の生産性に乏しい対立関係にある現状を打破するのキーワードとして、ジョゼフ・ナイに倣って「フクロウ派」を提唱する。二局対立ではなく、互いに補完し合う鼎立関係を理想的としている。 すわなち、三派はそれぞれタロットのごとく正・逆の意味を持ち、 タカ派・・・ (正)力による優位 (逆)挑発 ハト派・・・ (正)和解と調停 (逆)効果のない宥和 フクロウ派・・・ (正)情勢の統御 (逆)麻痺 それぞれ単独では長所と短所を抱えているが、三派が適切に議論し合い、補完し合うことが「平和の維持」に寄与するということである。「フクロウ派」の存在は「フォーリンアフェアーズ」で既に知っていたのだが、読んだ当時はいまひとつ内容が掴みかねていた。だが、本書の解説でその効能がはっきりと理解できた気がする。 |
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