「幻想工房」の雑記帳。 管理人の頽廃的でデカダンな日々を赤裸々全裸に記録
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『黄金の魔女が棲む森』 読了
2007-06-30 Sat 05:09
『黄金の魔女が棲む森』(麻木未穂・徳間ノベルスedge)
golden witch01
不死の魔女、精霊たち、黒衣の追跡者・・・
ファンタジー要素を散りばめた、4世紀末ローマ帝国を舞台にした歴史ファンタジー
最後の統一ローマ皇帝・テオドシウス1世治下のローマ帝国が舞台。
実際の4世紀末のローマ帝国についてかなり調べてあるのが好印象。東方ローマ宮廷では、ちゃんとコイネー(標準ギリシア語)が共通言語になっているし、男性はトーガやチュニカを、女性はストラを纏っている。食生活についても考証はかなり正確で、文面から当時の王侯・庶民の生活感が伝わってくるほど、描写にも力が入っている。また、主人公のシフはアエスティ("東の人"の意 黒海沿岸の琥珀貿易で栄え、エストニア族の始祖とされる タキトゥスの『ゲルマニア』に登場)王家の末裔であるなど、歴史ファンにとってはニヤリとさせられる。
ただ、気になる点が二点ある。この巻ではないが、ジャガイモが登場すること。これはちょっと信じ難いレベルのポカミス。あとは、「大剣」に対して「中剣」という表現が多用されていること。通常より大振りのものは「大剣」、小振りのものは「小剣」(ローマの重装歩兵の標準装備)と表記するが、「中剣」という表現にはもの凄く違和感を感じた。些末なことだが。
またテオドシウス帝はもちろんのこと、スティリコ将軍西ゴート王・アラリック、果てはフン族のアッティラ大王(まだ子供だけど)までもが登場するなど、世界史教科書レベルの有名人物が豪華出演しているのも本書の大きな特徴。幼少期について定説のないアッティラには大胆なオリジナル設定がされてあったり、アラリックがテオドシウス帝の在世中からローマ帝国に逆らっていたり(史実では、初代東ローマ帝国のホノリウス帝と決別)するが、この辺は創作物である以上、許容されるべき差異だろう。
本作のヒーロー(間違っていない)は、アエスティ王女のシフ見た目は13歳の少女だが、18年前に異腹妹のベーダを刺した罪によって王家を追放され、辺境の"神狩りの森"に追放された過去を持つ。・・・つまり、その事件以来彼女の時間は止まったまま、という訳だがこれが物語の大きな鍵となる。時は流れ、テオドシウス帝の愛妾となったベーダの命により、シフは帝都コンスタンティノポリスへと連行されることになるが・・・ という感じ。
そして、このシフ護送の任に当たったのが本作の薄幸のヒロイン(間違っていない)近衛騎兵隊長のレギウス。属州ブリタンニア出身の金髪碧眼・眉目秀麗・貞節堅固なこのレギウスと、シフの軽妙な掛けあい微妙な距離感がシリーズを通しての基本スタイルとなるのだが、この二人が気に入るかどうかで作品の評価が大きく異なってくるような気がする。
ちなみに、設定だけだと薄幸のヒロインっぽいシフだが、それを感じさせないほど活力に満ちているのが魅力的。まぁ、「金髪の赤子が欲しい」ってことでレギウスとの子作りを画策したりするので、読んでいる途中は「何だ、この色情狂は?」とか、思ってしまうがこの疑念はラストで氷解する。このへんは、読んでのお楽しみと言うことで。
ちなみに、シフとレギウスの旅は波瀾万丈。テオドシウスが塞外の蛮族を帝国内に招き入れ、彼らを傭兵として辺境防衛にあたらせる政策(レギウスも属州ブリタンニアの奴隷階級出身)が破綻を来しはじめている状況を反映しているのだろう。そこに、シフの宿す「不死」を求め、西ゴート王のアラリックや帝国の属州総督の思惑、宮廷内の派閥争いが絡んでくる展開は見事。また、シフを助ける精霊たち、シフの宿した「不死」を求める黒衣の騎士ヴォーダンなどは、「指輪物語」のナズグール(指輪の幽鬼、黒の乗手)を彷彿とさせるなど、ファンタジーも抜かりなく配されている。この歴史とファンタジーの配分がもっとも上手くいっているのは、この第一巻であると思う。西洋史に興味があり、かつライトノベルに抵抗のない方には是非オススメしたい一品である。
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